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「不審者」という言葉

「不審者」という言葉

 「不審者」という言葉が、これほど多く使われているのは日本だけである。西洋では「不審物」という言葉は使っても「不審者」は使わない。犯行動機の有無や犯罪性向が強い性格かどうかは、外見からは判断できないからだ。例えば、写真(左)は、イギリスの駅の防犯ポスターだが、「something(もの、こと)」と書かれているだけで、「人」は登場しない。

 日本では、人に注目する「犯罪原因論」の影響が絶大で、場所に注目する「犯罪機会論」が普及していないため、道徳教育では「人は見かけで判断するな」と言っているのに、防犯教育では「人は見かけで判断しろ」になっている。判別困難な「不審者」を無理やり発見しようとして、知的障害者、ホームレス、外国人を不審者扱いすることもしばしばだ。あるいは、識別は困難だと分かって、「知らない人はみんな不審者」とお茶を濁している。

 10数年前に小田急線の車内の窓ガラスに貼られたステッカー。同じ窓ガラスに数年前から貼られるようになった新しいステッカー。和文はどちらも同じだ。

 初版の英文には、「遺棄物(abandoned belongings)」と「不審物(suspicious objects)」しか書かれていなかったが、最新版の英文では、「遺棄物」が「不審者(suspicious persons)」に書き換えられている。しかし、修正すべきは、英語ではなく日本語だったのだ。

 人間不信を助長し、相互扶助を阻害する「不審者」という言葉――もういいかげんにやめませんか。


立正大学教授(犯罪社会学)
小宮信夫

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