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ウソの電話と本当の電話

ウソの電話と本当の電話

 先日、NHKの特殊詐欺に関する番組にVTR出演した。その中でボクは、ウソの電話と本当の電話の見分け方を説明した。しかし、番組全体としては、「怪しい電話はすぐに切れ」というスタンスだった。これは言い換えれば、「すべての電話はすぐに切れ」ということだ。そのことにだれも気づいていない。

 日本人の発想はいつもそうだ。子どもたちにも、「知らない人から話しかけられたら逃げろ」と教えている。これで、「おもてなしの国、日本」などと自己評価しているのだからあきれる。知らない人と話さなければ、子どものコミュニケーション能力も育たない。地域安全マップづくりでは、「人はウソをつくが、景色はウソをつかない。だから景色を見よう」と教えている。「不審者」に注意させているから子どもはだまされるのだ。そのため、海外では「不審者」という言葉は使っていない。「景色解読力」さえあれば、だまされることはないのである。

 振り込め詐欺も同様だ。「なんでもかんでも電話を切れ」と教えれば、緊急の連絡を自ら遮断してしまうかもしれない。息子は本当に困って助けを求めてきたのかもしれず、孫はわらにもすがりたい気持ちで電話してきたのかもしれないのだ。また、なんでもかんでも電話を切っていては、絶好の機会を失うことにもなりかねない。その電話は、本当にお買得商品の案内かもしれないのだ。インターネットを利用した詐欺についても同じことが言える。着信したメールは、本当にパスワードの漏えいを知らせるものかもしれないのだ。

 電話に出ず、メールも使わなければ、詐欺には引っかからない。子どもも家に閉じこもっていれば、誘拐されない。しかしそれでは、別の大きなものを失ってしまう。最新技術の恩恵に浴し、活動的な日々を送ることが万人の希望だろう。しかしそこには危険も潜んでいる。要するに大事なのは、危険と安全の「違い」を見極めることである。

 ではどうすれば、だまされずに済むのか。どうすれば、ウソの電話と本当の電話を識別できるのか。その答えは、世界最古にして最高の兵法書の執筆者、孫子が教えてくれている――「善く戦う者は、人を致して人に致されず(巧みに戦う者は、敵を思い通りに動かし、敵の思い通りには動かされない)」。


立正大学教授(犯罪社会学)
小宮信夫

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