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ニセ警察官

ニセ警察官

 今月初め、札幌市で小学3年の女児を連れ去り監禁していた犯人が捕まった。宮崎勤事件や奈良女児殺害事件などと同様に、今回もまた、子どもがだまされて自分からついて行くケースだった。にもかかわらず、相変わらず、事実から学ぼうとする姿勢はほとんど見られない。

 逮捕が報じられた日、たまたま小学校のそばを通ったら、校庭で朝礼が行われていた。校長らしき人が全校児童を前にスピーチをしていた。と次の瞬間、自分の耳を疑った。「犯人が捕まりました。よかったですね。皆さんも、大声を出して助けてもらいましょう」

――ち、ちがうでしょ。

 札幌の犯人は警察官を装い、「あなた万引きしたでしょう。ちょっと来なさい」と声をかけたという。海外では、ニセ警察官は詐欺の定番だが、日本にも出没するようになったのか……。

 かくいうボクも、ニセ警察官にだまされたことがある。スペインのバルセロナで、サッカースタジアムに行ったときのことだ。スタジアム前の道路を歩いていたら、旅行者風の中年男に呼び止められ、「写真を撮ってくれ」とカメラを差し出された。

 「写真を撮りましょうか」と近づいてきた場合には、渡したカメラをそのまま持ち逃げされる危険があるが、相手のカメラならその心配はない。そこで申し出に応じ、スタジアムをバックに写真を撮ってあげた。

 すると今度は、「向こうの方がいい写真が撮れる」と手招きしながら、歩道から離れていった。10メートルほどついて行くと、道路から死角になる壁の後ろに回り込もうとしたので、「もういいでしょ。急いでいるんだよ」とカメラを返した。とその時、どこからともなく別の男が現れ、身分証(らしきもの)を見せながら、「スペイン警察だ」「スタジアム周辺で麻薬が売買されているとの情報が入った」「パスポートを見せなさい」「財布の中身を見せなさい」とまくし立てた。ビックリしたボクが素直に指示に従うと、男は財布を返しながら「十分気をつけて」と言って立ち去った。気がつくと、写真撮影を頼んできた男も、いつのまにかいなくなっていた。

 これが事件の一部始終である。幸い、実害はなかった。

 過去の海外事例に照らして分析すると、旅行者風の男とニセ警察官はグルになってボクをだまし、ボクの気が動転しているすきに、財布から高額紙幣を抜き取ろうとしたのであろう。ただその時、ボクの財布には小額紙幣が数枚入っているだけだった。盗む価値はないと判断したに違いない。

 「入りやすく見えにくい場所」にはニセ警察官も出没する――バルセロナでも札幌でも、同じ原理が働いているようだ。


立正大学教授(犯罪社会学)
小宮信夫

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