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地域安全マップづくりの授業

地域安全マップづくりの授業

 先日、滋賀県草津市の常盤小学校を訪れ、2年生に地域安全マップづくりの授業を行った。そこで史上初の出来事に出くわした。 

 マップ教室では、フィールドワークに出る前に、危険性を測る「物差し」になる、「入りやすい」「見えにくい」という犯罪機会論のキーワードを教えている。その際には、安全な通学路や公園と危険なそれをホワイトボードに描き、それを比較するクイズを出して考えさせている。しかし、心理的な「見えにくさ」(見て見ぬふりをされる状況)を理解させるのはかなり難しいので、そのときだけは、学生が寸劇を演じて、そこでの具体的なやり取りを見てもらうことにしている。寸劇の状況設定は、子どもがだまされて連れ去られそうになっているのに、通行人が知らんぷりして歩き去ってしまうというものだ。その日も、いつものように、被害者役の子どもを選び、前に出てきてもらい、その子に誘拐犯役の学生が近づいて「だまし」が始まった。

 まさにその時だった。座っていた子どもが一斉に立ち上がり突進してきた。クラスメートを助けようとしたのだ。この乱入で寸劇は中断し、教室は騒然とした雰囲気に包まれた。これまで、この寸劇は100回以上演じてきたが、こうした展開は初めてだった。さすがにボクも動揺は隠しきれなかったが、それでも、「映画や演劇を見に行っても、いきなりステージに上がったりはしないでしょ」と子どもたちを戒めた。

 しかし、よくよく考えてみれば、子どもたちこそ、見て見ぬふりをしなかった人なのである。褒められこそすれ、叱られるべきことではない。反省すべきはボクの方だ。

 そういえば、三重県松阪市の第三小学校での地域安全マップづくり教室のときにも、同じようなことがあった。模造紙に道路を書いていた子どもが、黒の色鉛筆で塗り始めたので、「道路は茶色でしょ」と注意した。すると、その子どもは「道路は黒だよ」と反論してきた。頭をガツンと殴られたような衝撃だった。

 日頃、「アスファルト舗装の日本の道路は黒に近く、したがって光の反射率が低いので、日本で青色の街灯を設置しても、石畳のヨーロッパのようには路面を明るくできない」などと講演していながら、それを忘れていたのだ。子どもたちから学ぶことは本当に多い。


立正大学教授(犯罪社会学)
小宮信夫

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